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中央線と暮らす〇〇(まるまる)
中央線と暮らす「MIDな場所でまちおこし」な人

2024.11.07
INTRODUCTION
魅力・不思議
生活に欠かせない「食」の「仕事づくり」や「まちづくり」を行っている人が、三鷹駅から少し離れたエリアにいるらしい…。 グリーンパーク商店街にあるシェアキッチン「MIDOLINO_」もそのひとつ。いろいろな人がここで「自分の中から湧き出るもの」を形にして事業をスタートしていったみたい。 地域や人に素敵なスパイスを与えてくれる一般社団法人フラットデザインの舟木さんのヒミツに迫ります。

●「中央線と暮らす〇〇な人(企業)」

「中央線と暮らす〇〇な人」では中央線沿線で活躍する企業や人に注目して、その活動や魅力を伝えていきます。

第7回は武蔵野市で「食」の「仕事づくり」や「まちづくり」を行っている「一般社団法人フラットデザイン」の舟木さんです。

10月20日、三鷹駅の北側にある西久保エリアで「西久保3丁目パークサイドフードコート」というイベントが開催されていたらしいのですよ~。
駅から少し離れた場所にもかかわらず大賑わいだったんですって!

三鷹駅北側の西久保エリアやグリーンパークエリアはここ数年でおしゃれで美味しそうなお店が増えてきたよね~!

駅から離れた商店街ならではの落ち着いた雰囲気…、美味しいお店の発見も楽しいよね〜!

美味しさは大事だよね~(笑)。

確かに西久保エリア、グリーンパークエリアはここ数年でお店が増えたね!
昔の写真があったような…。

2016年頃の「グリーンパーク商店街」

グリーンパーク商店街は秘密の路地みたいでワクワクするよね。
昔から生活に必要なお店があったけど、最近はさらに違った活気あるみたいだね!

最近、お店が増えた理由があったのかな?

見てみて!あそこ賑わっているよ。

「「MIDOLINO_」」(武蔵野市・三鷹駅)

1.武蔵野市の新たなフロンティア

ここは「MIDOLINO_」というシェアキッチンで、さまざまなフードクリエイターや事業者が活動している場所ですよ。
木曜日は店頭でパンの販売も行っています。

※シェアキッチンMIDOLINO_を運営する一般社団法人フラットデザイン代表理事、舟木さんがお話してくださいました。

こんにちは!
皆さん楽しそうに買い物やお食事を楽しんでいて、以前と違った賑わいがありますね~!

このエリアは駅から離れていますが、市民の生活エリアとなっています。
私たちはこのエリアで事業者の能力を活かしあいながら、地域に必要とされるサービスがつくれるように「食」の提供やイベントを企画したり、エリアの活性化を行っています。

駅から離れたこのエリアが賑わっていると余計に気になってお店に入りたくなりますね~。
舟木さんはこのエリアと関係があって地域活性化を始めたのでしょうか?

実はゆかりがあったわけではないのですが、ここは中央線と西武線の真ん中、武蔵野市の真ん中、東京都としても武蔵野市は真ん中だったりします。
この「MID」な場所「緑町」で挑戦してみようと、2017年3月末に「MIDOLINO_」をオープンしました。
その後、グリーンパーク商店街だけでなく、周辺の商店街の方にも協力してもらいながら「MUSASHINO MIDTOWN」として、地域の魅力を再構築していこうと考えるようになりました。
武蔵野市では吉祥寺の知名度が高いですが、ここを「吉祥寺辺境地のカルチャーフロンティア」となるようにエリアマネジメントを心がけています。

―「MUSASHINO MIDTOWN」4つの商店街―

  • 緑町一番街
  • グリーンパーク商店街
  • 西久保NTT通り商店街
  • 西久保城山会

先日、西久保エリアで開催されたイベントかなりの賑わいがあったと聞きました!

パークサイドフードコートですね。
西久保エリアは公園を作ることからプロジェクトを始めたんですよ。

えぇ~!公園を作るんですか!?

コロナ禍では皆さん外出を避け、お店にも入りにくくなりました。
その時、公園のような公共の空間・屋外での交流がこれからは必要だと考えるようになりました。

大事なのは交流なんですね!

外出を避けお店の利用も減ったことで会話も少なくなりました。
逆に今になってから商店街に会話をしにお客さんが来るようになったんです。
「お釣り100万円!」のようなベタなやりとりが懐かしくなったような…。
個人商店の魅力、顔見知りのいる商店街は地域の元気さの象徴で、そこで生まれる交流は皆さんの健康や精神衛生を保つものだと思います。

なるほど〜!
確かに在宅勤務や外出制限の多い時代だったから人とお話しするのが嬉しく感じるようになりましたね!

それを形にするためにグリーンパークエリア近くの西久保エリアで「公苑前プロジェクト」を企画し武蔵野市の当時の副市長に相談しました。
そして公園を中心とした暮らしの質の向上、人とのかかわりを増やす場所をつくろうと動き始めたんです。

※このプロジェクトでは「公園」を「公苑」として表記しています。

公園作ろうとは普通なりませんよね。
なかなか想像ができませんが、どのようなことから始めたのでしょうか?

完成前の公園

公園を作るとなっても完成までには時間がかかるのでその前から、周辺にシェアオフィス、総菜店、1階が店舗のシェアハウス一棟、3物件を先行投資して始めていきました。
予算内でより良いものにするため、もともとの建物の改修から内装まで、出来ることは自分が行いました。

片付け作業から改修まで作業をしてきれいなシェアハウスが完成

ご自身で大工仕事までされたんですね!
発想力もですが、それを形にするにはたくさんの苦労があったかと思います…。

公園が完成する前には、行政とは別に近隣の方から公園の意見を聞く場も用意しました。
その時はちょうど選挙シーズンだったので「公園の未来像」選挙としてイベントと併せて開催し、皆さんの意見をもらったんです。

グリーンパークエリアも西久保エリアも、舟木さんの発想や行動力で今のように魅力的に変化していったのですね!
ここ数年で市民の人もその変化を間違いなく感じていますね!

完成した西久保はらっぱ公園の様子

2023年の4月に「西久保はらっぱ公園」として無事に開園することができました。
開園前から自分たちでイベントを開催しましたが、ビアガーデン催事の際に道路に人が集まりすぎて苦情がでてしまったんです。

2023年7月に開催したパークサイドビアガーデンの様子

なんと!
開園から人を集め過ぎちゃうのもすごいですね!(笑)

そのため今年はちゃんと道路使用許可をとり、西久保3丁目パークサイドフードコートを開催しました。
この場所での道路使用許可は40年ぶりだそうです。
今年はさらにたくさんの人が集まってくれました。
出店店舗数は多くなかったのですが、それでも売り上げはこれまでのどの催事よりも多く、駅から離れた場所であっても、きちんと企画や告知をして美味しいものを提供する誠意のある事業者がいればちゃんと売上があげられることが実証できました。

2024年10月20日開催の西久保3丁目パークサイドフードコートの様子

確かにこれだけ人が集まって皆さん利用しているわけですから、駅近に負けてませんね!むしろそれ以上かもしれません。
あえて駅から離れた場所で挑戦するのは理由があるのでしょうか?

私はこれからお店を始めたいという方の相談業務も行っていますが、都内でお店を始めるにはいくつかのハードルがあります。
吉祥寺はもちろん、武蔵野市内は少し離れた場所でもやはり家賃が高めです。
さらに駅から離れるとそこは人通りが少なくなります。駅前だけでなく中央線沿線でも魅力的なお店が多いなど…。
そういった条件の中、どうやってお店を継続させるか、この生活の中心となるエリアで実験のようなこともしながら事業をしています。

実験結果として変化があり人が集まっている。
まさに武蔵野の新境地、フロンティアですね!

2.食の芸能事務所

運営されている「MIDOLINO_」さんはシェアキッチンとして、いろいろな方が食事などを提供をされているんですよね?

この場所は6つの食品営業・製造の許可をとっており工場機能のあるシェアキッチンとしてご利用いただけます。
「MIDOLINO_」では同時に数店舗が出店できることも特徴で、それぞれの事業者さん、フードクリエイターさんが集まることで、商品が充実し魅力を高めながら協業することができます。

―6つの製造許可―

  • 飲食店営業業
  • 菓子製造業
  • そうざい製造業
  • 密封包装食品製造業
  • 食肉販売業
  • 漬物製造業

実際に調理・提供されている様子

「MIDOLINO_」さんだけでもマルシェのようになっているんですね!
工場機能があるということは、ここで作って別の場所で販売もできるんですよね?

許可を得ているカテゴリのものであればここで作って他のイベントやお店で販売もできます。
製造許可関係もですが、料理を提供する人たちの中にも料理はとても上手でも、経営やマーケティング、商品開発まで、全て一人でこなすのは至難の技です。
売れないと思っていた商品でも名前を変えるだけでも売れ方は確実に変わります。

美味しいものが作れても、いざ販売するってなると方法がわかりませんよね…!

そういったことに挑戦ができる環境を整えることを心がけています。
リスクをこえてワクワクすることに挑戦する人は「タレント」さんで、「MIDOLINO_」はその活動をサポートする「芸能事務所」のような存在だと考えています。
具体的には、私が営業代行して、いろいろなお仕事・イベントとつなげたり、1人ではできない仕事をチームで受けたりもしています。
他にも商品の見せ方を考え、価格交渉、法人しか対応できない案件の面倒な手続きをしたり、事業のプロデュースもしたり、みんなが輝くためのステージをつくれるようにと考えています。

吉祥寺駅前での出店の様子

そこまで体制があれば最初の不安が軽減されますね。
舟木さんはもともと「食」のお仕事をされていたのでしょうか?

まったく「食」は関係のない仕事で、デザインやブランディングをしていました。
「MIDOLINO_」を始める前に、吉祥寺で飲食や地域にかかわるようになり、今となっては料理を自分で作って提供できるようになりました。

やっぱりご自身でも作るんですね~!

ある時、自分で作るしかない状況になってしまい…、そこから10か月間毎日違うメニューを作り続けました(笑)。

おうちでも毎日違うメニューは大変だよねっ!

想像するだけで大変っ!
舟木さんのなんでもやっちゃう対応力が恐ろしいです…!

3.ひと味違う創業支援

少し話が戻りますが、舟木さんは実際に事業を始めたい人のサポートもされているんですよね?

はい。お店をはじめるまえに、はじめるお店として、「MIDOLINO_」で実践を積める場と機会を提供しています。

創業支援って聞くと、起業の仕方や面倒な手続きやお金のお話を教えていただくだけかと思っておりました!

支援という表現だと「何かしてもらえる」印象になってしまいますが、創業と支援は相反する言葉です。
起業は事業規模の大小は関係なく、自信で看板を背負って全責任を負う「自立した人」になることです。
やるのはその人自身なので僕は何もしません。
やりたい人がやりたいことがすぐ始められる環境と機会を提供するだけです。

確かに目的が「起業」することになってしまって、「起業」を支援してもらって終わり…ということではないですよね。
できることは自分でやる。「MIDOLINO_」さんの環境や機会が身近にあるだけでも心強いはずです。

事業は「継続」することが一番重要です。
「やりたいこと」のないものねだりに固執するよりも、「今できること」でどうやったらお客様が喜んでくれるか考える。これがともても大切なポイントです。

確かに最初はがむしゃらに「やりたいこと」を優先してしまいそう…。

何より事業を始める方の事業者としての心構え、謙虚な姿勢、継続的な努力が一番大切です。
普通に作るだけでは大手企業にも勝てないですし、これからは人口が減り必要とされるサービス量が減るのは間違いないので、いろいろ今のうちに準備しておかなければなりません。
そこで自身個性をより磨き上げ、他にないものを作る、なにより「ユニーク」であることが最大の価値だと思います。
つくった「差異」はマネされてしまいます。
他の誰もマネできないもの、それは自分にしかない「個性」で「ユニーク」さこそが最大の価値の源です。

その人ならではの「ユニーク」さをこの場所で見つめなおし、磨きあげるんですね。
そして「継続」を考えることも、事業を始める人には必要不可欠ですね!

結果的に個性を活かしあえる個人事業者が増え、地域の人が日々の生活に必要だというニーズに応えること、つまり、地域のインフラの一部を担うことができれば地域活性化につながると思います。

4.開かれる扉たち

実際に「グリーンパーク商店街」や「西久保はらっぱ公園」の付近はこの数年で変化が生まれていますが、地域として、また舟木さんとしては今後どのようなビジョンを描いているのでしょうか?

最初は何とかこの地域のシャッターを開けて、人が通える場所を作ろうと考えていました。
結果として今は不動産のようなことも始めていて、建物のオーナーさんとの間に私が入り、テナントとして事業をはじめてもらえるように、まずはそこで事業が成立するという売れる状況をつくってから入居を打診する、というところまでやることもあります。
これも地域の建物オーナーさんの心ある理解があってこそ実現できたことですね。

現在、自社では7物件を借りて運用し事業を行っています。
その他にも「MIDOLINO_」出身の方たちで商店街で拠点を構えたいという人も出てきてくれて、2年半で3つのシャッターが開き、4年半で13の事業に助力しました。

どんどんと新しい風が吹いていますね!
このエリアに戻ってきてくれる方がいるのは嬉しいですね~。

地域だけに限りませんが、ギフト経済が重要だと最近は考えています。
価格に不満のない対価以上の「ギフト」を提供できた時にお客様は「感謝」するわけで、だからもう一回きたいなと、信頼をよせてくれるようになるんだと思います。
成功している人は必ずどこかで「ギフト」している。そこまで道を深める、そういう心持で事業をしている人って本当にすごいと思います。

自然に何かをギフトすること、簡単なようで難しいことですよね!
ギフトとはちょっと違うかもしれませんが、「MIDOLINO_」さんでは「ウンチクの多い料理店」というワクワク企画もされているんですよね?

毎週日曜日に「ウンチクの多い料理店」を開催しています。
11月はテーマを「絵本とスープ」として開催していて、こどもは100円、中学生以上は300円でご利用いただくことができます。
こちらは2年経った頃に10,000食の提供を行いました。

1万食!
そして「ウンチクの多い料理店」のネーミングが楽しそうですね!

地域の企業の方に声をかけられて誰でも普通に立ち寄れる「地域食堂」を始めたのですが、もちろんただはじめただけでも、ただ安いからという理由でも誰も来ません。
福祉的な側面がある事業だとしても、来てくれた方が何を期待して、何をどう楽しんで帰っていくのか、それを徹底して考えないと先はないと心しました。
「食事」の提供の他、子どもたちがコミュニケーションがとれる、ワークシートなどを用意して学びがある、車も通らず安心して遊べる…。
親子ともに行ってみたいと思えるような企画や見せ方をして、ポスティングなども行ったことで、少しずつお客様が訪れるようになりました。
今ではサポータースタッフがとても良い方が多いので皆さんとのコミュニケーションを楽しみに毎週多くの方が訪れてくれるようになりました。

「食」を提供する以外にも受け取るものがたくさんあって、まさに「ギフト」がある企画になったのですね!
そして舟木さんの企画はチラシのデザインも素敵ですよね。

もともとデザインもしていたのでデザインはもちろんイラスト、映像…。そしてポスティングも自分でやっています。

ポスティングまで…!やはり対応力が恐ろしいです…!

ありがとうございます(笑)。
「地域食堂」のコミュニケーションの延長で、けん玉や駒などもやっているのですが、ベーゴマにハマったお父さんがベーゴマ大会に出場し準優勝し、グリーンパークでも大会をやりたいということで大会を開催することになりました。
大会に向け商店街のみんなで練習を始め、木曜の夕方にはだれも仕事せずベーゴマの練習をしていることもありましたよ。
ちなみにそのお父さんは大会では司会も担当し、奥さんに「開花した」とほめられる程、大活躍でした。

お父さんも普段のお仕事とは違う活躍の場があってワクワクですね!

こういった縁日と絡めたイベントも人がたくさん来てくれました。
以前は商店街のイベントで一過性の要素もありましたが、こういった企画によって賑わい・交流を創出できるようになりました。

最初にお話があった「交流」がまさに行われているわけですね。
閉じていたお店の扉だけでなく、人と人とのつながり、新しい活動の場と、いろいろなものがオープンになって「まちづくり」が広がっているんですね~。

「まちづくり」は時間がかかり簡単なことではないと思いますが、これからは何か考えているものはありますか?

次なるインフラとしては冷凍食品の製造もできるようにと考えています。
まだなかなか手を付けられていませんが、これによっていろいろな可能性が広がると考えています。
またイベントであれば11月16日に「武蔵野ワールドマーケット」を開催します。
三鷹駅北口とグリーンパーク商店街のエリアで様々な企画を開催する多文化をテーマにしたイベントとなっています。

前回の様子

エリアもジャンルも広くて楽しそうですね~。

三鷹駅北口エリアと緑町エリア、当日はトゥクトゥクが運行していますよ!
ぜひ遊びにいらしてください。

移動方法まで多国籍なんですね!
絶対行きます(笑)
今日は貴重な「まちおこし」と「食」のお話ありがとうございました!

MIDOLINO_
住所  武蔵野市緑町1丁目5−20 緑町1-5-20 第一根岸ビル1F  
定休日 土・日曜日祝日
事務局営業時間 10:00 – 18:00
HP  https://www.midolino.tokyo/  
Instagram  https://www.instagram.com/midolino_/  
公苑前のオフィス
住所  武蔵野市西久保3丁目11−1−103  
事務局営業日 平日10:00 – 18:00
HP  https://www.coen-mae.net/  
Instagram  https://www.instagram.com/coen_mae/  

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